三菱ガス化学株式会社で作成されている熱可塑性樹脂:MXD6 を用いて、分子動力学計算で引張シミュレーションを行った。ここでは、歪み速度を変えたベンチマークを紹介する。
図1 MXD6の化学構造
シミュレーションに用いたMXD6の重合度nおよび、分子数、原子数を示す。
表1 シミュレーションに用いたMXD6の重合度nおよび、分子数、原子数
図2 樹脂のイメージ
シミュレーションに用いたソフトおよび計算条件を示す。
表2 シミュレーションに用いたソフトおよび計算条件
図3 MXD6の引張シミュレーション
歪み速度が遅くなると引張最大強度が減少している。減少する理由は、ゆっくり引っ張ることで樹脂構造の緩和がより行えるために、全体のストレスが小さくなるためである。
シミュレーション時間を分かりやすく示すためX軸をシミュレーション時間にした図を示す。
図4 X軸をシミュレーション時間にした場合のMXD6の引張シミュレーション
各歪み速度でかかった計算時間とコストを示す。
表3 各歪み速度でかかった計算時間とコスト
※1 GPU:P100を2枚使用
※2 セービングノードを使用
クラウド計算機を用いることで、同時に複数の歪み速度を変えた計算を実行することができる。ここでは、同時にGPU:P100を7枚用いて計算を行っている。1枚のGPUマシンを揃えるのに、100万から200万ほど必要になる。さらに7枚のGPUマシンを揃えると膨大な費用になる。7枚の GPU:P100のマシンを揃える設備費と比べた場合、クラウド計算機の方がコストと研究時間の面で優れていることが分かる。
参考文献
[1] M. Yabe, K. Mori, K. Ueda, M. Takeda, J. Comput. Chem. Jpn. Int. Ed. 5, 2018-0034 (2019)