本事例ではRh表面上におけるNO分子の解離反応をQuantum EspressoのNEB機能を用いて計算しました。RhはNO解離活性の高い三元触媒の一つです。
1.計算モデル
表1 反応式
NO*→ N*+ O* | (NO解離反応) |
N*+ NO*→ N2O* | (N2O生成反応) |
ここでは、NO分子の酸化還元反応のうち、以下の2つの反応を計算しました。また、反応の始状態および終状態におけるRh表面上の分子位置は、既往文献[1]に従いモデル化し、構造最適化を行いました。
図1 反応始状態および反応終状態の計算モデル
次に、Materials DesignerのInterpolated Setを使って、NEB計算用のモデルを作成しました。ここでは、図1の始状態と終状態に加えて、中間のイメージモデルを5つ作成しました(図2)。作成したモデルを保存し、workflowのNudged Elastic Band(NEB)を用いてNEB計算を実施しました。
図2 中間イメージモデルの作成
2.計算条件
表1に本事例におけるQuantum Espressoの計算条件を示します。
表1 計算条件
項目 | 詳細 |
---|---|
擬ポテンシャル | Rh_pbe_gbrv_1.4.upf N_ pbe_gbrv_1.2.upf O_ pbe_gbrv_1.2.upf |
カットオフ 波動関数 | 40 Ry |
カットオフ 電子密度 | 200 Ry |
k点 | 3×3×1 |
収束閾値 | 10-6 |
Mixingパラメータ | 0.3 |
3.計算結果
図3および図4にNEB計算から得られた反応におけるエネルギープロファイルを示します。
図3 NO解離反応のエネルギープロファイル
図4 N2O生成反応のエネルギープロファイル
図3および図4より得られた反応障壁エネルギーを表2に示します。計算条件の差異により、計算結果に違いは表れていますが、既往研究結果と類似した傾向がみられることを確認できます。
表2 反応障壁エネルギー
反応 | 本解析の反応障壁(eV) | 既往研究の反応障壁(eV)[1] |
---|---|---|
NO解離反応 | 1.47 | 1.12 |
N2O生成反応 | 1.58 | 1.61 |
4.計算時間とコスト
最後に本計算の実施にかかった計算時間とコスト表3に示します。
表3 計算時間とコスト(セービングノードを使用)
計算モデル | 計算時間[時間] | 金額[ドル] |
---|---|---|
NO解離反応始状態 構造最適化 | 18 | 16 |
NO解離反応終状態 構造最適化 | 14 | 13 |
N2O生成反応始状態 構造最適化 | 32 | 27 |
N2O生成反応終状態 構造最適化 | 11 | 10 |
NO解離反応NEB | 42 | 36 |
N2O生成反応NEB | 72 | 55 |
参考文献
[1] A.Ishikawa and Y.Tateyama, " First-Principles Microkinetic Analysis of NO + CO Reactions on Rh(111) Surface toward Understanding NOx Reduction Pathways ", J. Phys. Chem. C, 122, 17378 (2018)